2005年6月12日
「あなたの敵を愛しなさい」
ルカの福音書 6章27〜36節

 「あなたの敵を愛しなさい」ということばほど多くの人々に知られ、しかし実行することのむずかしい命令はないでしょう。文脈から考えて互いに戦争をしている2国間の関係というより、主は、私たちの周りにいて私たちを憎んでいる人たちとの関係を取り上げています。主イエスはまさにご自分を憎み、敵対している人々に対して福音を語り、愛を説き、祈られたのです。だから主の教えは決して机上の空論ではないのです。

 I. あなたの敵を愛しなさい。
 マタイの「山上の説教」で主イエスは、「『自分の隣人を愛し、自分の敵を憎め』と言われたのを、あなたがたは聞いています」と言っておられます(5:43)。前半の教えはレビ記19:18にありますが、後半は、当時の学者が付け加えて人々に教えていたものです。旧約の歴史を見ても、同胞イスラエルの人々が互いに隣人として愛し合い、イスラエルに敵対する異邦人を憎むことは、主のご命令として実行して来ました(民数記31:2以下参照)。しかし主イエスはこう言われます。「あなたの敵を愛しなさい。あなたを憎む者に善を行いなさい」(27節)。これはことばだけの問題ではなく、実践が伴うことだとわかります。「あなたをのろう者を祝福しなさい。あなたを侮辱する者のために祈りなさい」(28節)と続き、「あなたの片方の頬を打つ者には、ほかの頬をも向けなさい」(29節)と命じます。普通では到底実行できないようなことですが、実際私たちの周りにいて、私たちの悪口を言ったり、意地悪をする人がいるとして、その人のために祈ることなのです。たとい侮辱されても、その時は悲しいことですが、いっさいを主に申し上げてその人のために祈ることなのです。実はそのときに心の痛手はいやされるのです。「自分にしてもらいたいと望むとおり、人にもそのようにしなさい」(31節)の黄金律を実行することで悪に勝つことができるのです。

 II. 返してもらうことを考えずに貸しなさい。
 お金の貸し借りで友だちを失うことはよくあることです。「金の切れ目が縁の切れ目」という古いことわざも、「お金で買うことのできる友だちは、お金で買い取られることもできる」という新しいことわざも、みなこの世の真実を表しています。一般には返してもらうつもりで人に貸します(34節)。しかし主イエスの教えは逆なのです。主は、返してもらうことを考えずに貸しなさい、と言われます(35節)。そうすれば主から大きな報いをいただけるのです。これはきわめて具体的で示唆に富んだ教えです。キリストを信じ、神の子どもとされている私たちは、主の教えを実行して、本当に「いと高き方の子ども」と呼ばれたいものです。

  今泉キリスト福音教会 牧師:岡本 昭世 【説教インデックスへ
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