主イエスの生涯の中で、誕生の前後と30才から始まる公生涯については福音書に記されています。しかし30才になるまでナザレの村でどのように過ごし、成長されたのかは、知ることができません。ただルカの福音書にイエスさまが12才の時のエピソードが書かれてあり、ほんのわずかに、イエスの少年時代をかいま見ることができます。当時イスラエルでは13才で少年は「戒めの子」と呼ばれ、会堂の正式のメンバーとなりました。イエスの両親は、その前年12才の時に彼をエルサレムに上らせて「戒めの子」になるための準備をしたのです。旧約時代人々は年に3回の祭りにエルサレムに上り宮で礼拝することが義務づけらていましたが、イエスの時代は年1回になっていました。主の両親は過越の祭りの時に、親戚の人たちとともに毎年上京していたようです。両親はまったく気がつかなかったのですが、少年イエスは、一行から離れてエルサレムにとどまり、宮にいました。イエスを捜しにエルサレムに戻った両親は、宮で律法の教師たちの真ん中にすわって、話を聞いたり質問したりしておられるのを、見つけだのです(46)。イエスさまについて2つのことを学びましょう。
I 主イエスは真の知恵と知識を持っておられた
すでに少年イエスは神の御子として律法の教えに精通していました。ラビ(教師)と言われる人たちと比べることができません。だからその宮にいた人々はイエスの知恵と答えに驚いたのです(47)。このような知恵は、神が人となって生まれてくださったのだから、当然と言えるのですが、幼いときから御父との交わりの中でさらに与えられたのでしょう。コロサイ2:3参照。
II 主イエスは、真の父は御父であると知っておられた
3日間もイエスを捜し回った両親がどんなに心配したかは、想像できます。両親はイエスを見て驚き、母はこう言いました。「まあ、あなたはなぜ私たちにこんなことをしたのです。見なさい。父上(直訳:あなたの父上)も私も(原語では強調形)、心配してあなたを捜し回っていたのです」(48)。しかしイエスのお答えは違っていました。「どうしてわたしをお捜しになったのですか。わたしが必ず自分の父の家(直訳:わたしの父の家)にいることをご存じなかったのですか」(49)。イエスはすでに父ヨセフとご自分の真の父である御父とをはっきり区別しておられたのです。 |