昔も今も、福音を携えて異境の地に出かけて行くのには、それなりの理由がなければなりません。まだ福音を聞いていない人たちに対する重荷とか使命とかは、大切な理由の一つですが、何よりも重要なことは、主の導きです。今日でも主が、みことばと聖霊によって、宣教者に働いてくださり、彼が目的地を決定することがあるでしょう。そのとき、その人は確信を持って宣教地に出かけられます。パウロの場合はどうだったでしょうか。
I. 主に導かれて宣教地へ行く。
パウロたちが第2回目の伝道旅行を計画した目的は、第1回目の時に宣教した町々の教会をもう一度訪問して、彼らの信仰を励ますことでした。しかし、主のご計画はもっと大きかったのです。ピシデヤのアンテオケからまっすぐ西の方へ、恐らくエペソのあたりへ向かって進もうとしたとき、そこでみことばを語ることを聖霊によって禁じられたので、北西方向のフルギヤ・ガラテヤの地方を通りました(6節)。こうしてムシヤに面した所に来たとき、北方のビテニヤに行こうとしましたが、またもやイエスの御霊がそれをお許しにならず、一行はムシヤを通ってトロアスに下りました。その先はエーゲ海です。しかし主は、ある夜、パウロに幻を見させ、一人のマケドニヤ人に「マケドニヤに渡って来て、私たちを助けてください」と懇願せたのです(9節)。このように主は、聖霊やイエスの御霊や幻によってみこころを示しました。こうしてパウロが確信したことは、これから海を渡ってマケドニヤまで行き、そこに住む人たちに初めて福音を語るべきことでした。「今日のみことば」(10節)の通りです。
II. 主に導かれて福音を語る。
一行は、トロアスから船に乗り、サモトラケ、ネアポリスを経由し、ピリピに行きました。この町はマケドニヤ地方第一に町で繁栄したローマの植民都市でした。ルカも含めたパウロたちは、そこに幾日か滞在し、安息日に、川岸にある「祈り場」に行き、そこに集まった女たちにイエスの話をしました(12~13節)。この町にはまだユダヤ人の会堂がなかったのです。小アジヤのテアテラ市の紫布の商人で、神を敬う、ルデヤという婦人が聞いていましたが、主は彼女の心を開いて、パウロの語ることに心を留めるようにさせてくださいました(14節)。こうして彼女は、家族とともにイエス・キリストを信じ、バプテスマを受けました。今日の言い方をすれば、説教者が語った聖書のみことばが、聖霊とともに働いて、聞いた人たちが心を開いて、イエスを救い主として受け入れたことを意味するでしょう。ルデヤは、ピリピ伝道、すなわちヨーロッパ伝道の初穂でした。さらに経済的に豊かだったと思われるルデヤは、自分の家をパウロたちの宿泊ために提供しました。福音はこうしてアジヤからヨーロッパへと広がって行ったのです。主に導かれて出かけてゆき、そこで福音を語ることは本当に大切なことです。 |